第1話「8020運動」
 日本人の平均寿命は世界一となりましたが、歯の寿命はまだ五十歳程度というの が現状です。そういう中で歯の健康づくりを積極的に推進するための歯科保健の到 達目標として、日本歯科医師会で提唱されたのが「8020運動」です。歯の残存 本数が約二十本あれば食品の咀嚼(そしやく=咬みくだくこと)が容易であるとさ れており、日本人の平均寿命である八十歳で二十本の歯を残すという目標の運動で す。このスローガンは、残存歯数と快適な食生活との関係という上で理解されやす く、次第に浸透してきております。  老後の楽しみの一つは食事であるはずです。食事を楽しむためには、食べたい物 をなんでも自分の歯でかめることが必要です。よくかむことによって歯は骨植堅固 になりあごの骨の発育を促します。さらにだ液がよく出て食物中の毒を消し、歯肉 の炎症を抑え、胃の負担を軽くします。また、だ液の中にはぼけを予防する物質が 入っているといわれております。  これだけではありません。かむことにより大脳の血流量が増加し頭の回転がよく なるばかりでなく全身の筋肉が丈夫になります。「8020運動」は、歯の健康にと どまらず全身の健康にとって意義のある運動といえます。単に命をながらえるだけ の長寿社会ではなく、健康で実り豊かな生活を楽しむことのできる長寿社会にしな ければならないと叫ばれているこのごろ、食を楽しみ、会話を楽しみ、大いに笑い、 交流を楽しむという「生きがい」を支えているのが健康な歯なのです。  「8020運動」は、老年期に限った運動ではありません。胎生期にある母体の中 から、もう既にその活動が開始されているのです。現在、二十本の歯を有している 年齢はおおむね五十歳。「5020」にしかすぎません。実に「8020」との間に は三十年もの開きがあります。不幸にして歯を失った場合には、残存歯の保護と機 能回復のためにもブリッジや義歯などの欠損補綴(ほてつ)の必要があります。 「齢」という字さえも歯が重要であると訴えています。心と体のバランスのとれた 健やかな成長を支える歯をもっと大事にしてほしいというのが歯科医師会の願いです。
(県歯科医師会)