「ためになる歯の話」 No41 No42  No43  No44  No45  No46  No47  No48  No49  No50    No1 - 10 No11 -> No20  No21 - 30 No31 - 40 No41 - 50

1 第41話「エックス線 被ばくの危険ほぼなし」
2 第42話「反対咬合と英語 教科書通りの発音できず」
3 第43話「マウスガード スポーツ外傷から守る」
4 第44話「発音 歯並び治し明りょうに」
5 第45話「痛みと炎症 薬だけでは治らない」

6 第46話「入れ歯 忍者は変装に使った?」
7 第47話「」
8 第48話「」
9 第49話「」
10 第50話「」

 第41話「エックス線 被ばくの危険ほぼなし」 

 歯科医院では一度に何枚ものエックス線(レントゲン)を撮ったり、また同じ場所を何度もエックス線撮影することがあります。
そのため、よく患者さんから「そんなにレントゲンを撮って大丈夫なの?」と聞かれることがあります。  まず、歯科治療においてエックス線検査は必要不可欠なものであることを分かっていただかねばなりません。
歯とその周りの骨(歯槽骨=しそうこつ)の状況は目で見るだけでは分かりません。特に歯の根の形は複雑で、治療の各段階でエックス線検査が必要になります。  また歯周病の場合には、全体の歯周病の進行状態を把握しなければなりませんので、何枚もエックス線撮影したり、全部の歯を一度に撮影するパノラマと呼ばれる撮影方法をしたりします。  エックス線検査による危険性ですが、歯科治療におけるエックス線検査では、たとえ一度に何回も撮影しても危険はないものと考えてよいでしょう。
もちろん統計学的な理論値では、危険が全くないわけではありませんが、数値は極めて低いので、現実的には無視できる程度のものです。
 歯科エックス線検査が危険でない理由には、撮影範囲がとても小さいこと、フィルムの感度や画質の性能が向上して少ない放射線で撮影ができるようになっていることなどが挙げられます。さらに撮影時に防護エプロンを着用していれば、身体への影響は一層小さくなります。
遺伝的な影響を考えても同様に危険はありません。卵巣や妊娠中の胎児が歯科エックス線検査によって直接被ばくすることはほとんどないので、これらが影響を受けることはないと考えられます。  歯科医師はエックス線検査の有用性、必要性、危険性、安全性についてよく知っており、その上で治療に当たっていますから安心していただいてよろしいかと思いますが、不安があれば気軽におたずねください。
 目で見ることのできない歯の根の治療は、エックス線検査をすることにより、よりきちんとすることが可能となるのです。 (県歯科医師会)



第42話「反対咬合と英語 教科書通りの発音できず」  上へ

 私ども歯科医師は日進月歩の医学についていくため、日々の研さんを積んでおります。しかし、日々の診療の中で患者さんから教わることも本当に多いものです。
十年ほど前のことですが、こんなことを経験しました。
 ある日、中学一年の男子生徒が父親に連れられて来院いたしました。前歯のかみ合わせが逆になっているので学校からの健診表に「歯科医院で相談してみてください」と書いてあったというのです。  診てみますと、虫歯は一本もありませんが、なるほどあきらかに前歯部の反対咬合(こうごう)です。プロレスラーのアントニオ猪木似の顔をした父親は「だんだん私に似てきちゃいましてネ」と、やや照れている様子。しかし二人とも前歯のかみ合わせが逆なことに関しては、とんと関心がなく全く気にしていない様子。
 それでも、一通り矯正歯科治療についてスライド等を用いて詳しく説明したあと、「いつか歯並びが気になるようなことがあったなら、その時にもう一度いらっしゃい。こういう治療に年齢制限はありませんからね」と言って帰っていただこうとしたその時、その生徒はこう言ったのです。
 「僕、歯並び治療やりたいな」。そこで私は「だって、さっき反対校咬合は全く気にならないって言ったじゃない」と言うと彼は、こう続けたのです。
 「先生、あのね、かみ合わせが逆だとね英語の発音がうまくいかないの」
 「そんなことはないよ。例えば反対咬合のアメリカ人だって普通に英語をしゃべっているんだよ。そうだろ」
 「先生、あのね、英語の教科書ってね、前に出ている上の前歯と下の前歯の間に舌を…こう…はさんでね、ディス・イズ・ア・ペンってやるんだよ。かみ合わせが逆だと教科書通りにできないんだよ。分かる?だから、みんなと同じ歯並びになれるんだったら矯正治療、ぼく、やりたいな」
 この発言には妙に強い説得力があり、父親も私もあぜんとしてしまったのをはっきりと覚えております。確かに反対咬合の人が英語を学ぼうとする時には、教科書に示されているあの図が大きな障害になっているようです。そのことに気付かせてくれたあの少年には今も感謝しています。
 一年半ほどの治療で終了したように記憶しておりますが、あの少年、英語の成績がアップしたかどうかはちょっと聞き損なってしまいました。
(県歯科医師会)


第43話「マウスガード スポーツ外傷から守る」   上へ

 高校生が抜けた前歯を一本持って来院しました。バスケットボールの練習中に友達とぶつかって、けがをしたというのです。治療が終わって「どうしてマウスガードをしなかったの」と尋ねたところ「マウスガードって何ですか」との返事が返ってきました。  マウスガードとは口の中の保護装置で、マウスピース、マウスプロテクターなどと呼ばれています。ボクシングのマウスピースと聞くと納得される方も多いと思います。マウスガードは、外力からあごと口の周りヘの衝撃を和らげ、歯の破折や、あごの骨折、口の中や口の外の軟組織(粘膜や皮膚)のけがを防止するものです。  あごや顔面領域のけがで、最も発生頻度が高いのは交通事故です。交通事故に転倒と転落を加えると80%以上を占めます。  一方、スポーツ外傷の発生頻度は19%ほどあります。そのピークは十代から二十代の男性です。今後、女性の参加が多く見込まれるスポーツ種目を含めると、外傷の発生頻度が増加する可能性があります。  マウスガードが必要とされるスポーツは、ボクシング、サッカー、アメリカンフットボール、ラグビー、野球、ホッケー、アイスホッケー、柔道、空手、相撲、バスケットボール、ハンドボール、スキーなどが挙げられます。  正しいマウスガードの使用は、体のバランスの安定、筋力の向上が見られるという研究データがあります。競技の種類によっては、競技力が向上するという報告もあります。  ただしマウスガードの効果を最大限に活用するには、歯科医院で型をとって精密に作ることが必要です。  簡易型のマウスガードは、価格は安価ですが、自分の口に合ったものができないために、口を開けるとすぐに落ちてしまったり、正しいかみ合わせができずあごの関節を痛めるなど、かえって危険なことがあります。歯科医院で精密に作ってもらいましょう。  また多くのスポーツ選手は、パワーを出すために歯を食いしばります。マウスガード装着時の食いしばりは、マウスガードをすり減らします。マウスガードは一年に一回は、すり減りや破損をチェックしてもらい、傷んだものは作り替えましょう。  皆さんもマウスガードを使用し安全で楽しいスポーツを行ってみてはいかがですか。 (県歯科医師会) (県歯科医師会)


第44話「発音 歯並び治し明りょうに」   上へ


 歯並びが悪かったり、歯が欠損したりしていると発音が思うようにならないということについては、既に気が付いている方も多いと思います。  あるいは、そういった不自由な体験をしたことのある方も少なくないと思います。実際、歯がたったの一本抜けただけでも随分しゃべりづらくなるものです。奥歯がないと「か」行が発音しづらくなりますし、前歯のかみ合わせが逆、つまり反対咬(こう)合だったりすると「さ」行の発音がはっきりしなくなります。歯並びが悪いと「た」行がうまくいきませんし、前歯がない人の「さ」行の発音を聞きとるのは、かなり困難なものです。  それでも日本語の発音は「母音」止めが多いのでまだいい、といえばいいのですが、英語などは「子音」主体の言語です。そういった観点からしましても、これからの世界を担う子供たち、若人が現代の国際化時代に対応していくためには「きれいな歯と美しい歯並び」が条件である、と言い切っても過言ではないように思われます。  話し方・発音で、もう一つ。皆さんの周りに舌たらずな話し方をする子供さんはいらっしゃいませんか。こういう舌たらずで、こもったような話し方をする子供さんは「舌小帯強直症(ぜっしょうたいきょうちょくしょう)」といって、舌と下あごをつなぐ筋肉の異常によって発音の異常が起こっていることが多いものです。こういう場合には「ら」行に大きな異常が出てきます。小学校に入学しても舌たらずな言い方のままでいるようなら一度、歯科医院で相談してみた方がよいと思います。  「歯が命」の人でなくたって白く美しい歯、そして美しい歯並びにはあこがれるものです。それなのに、歯がないままで格好悪いのを我慢していたり、歯並びやかみ合わせの悪いことに劣等感を持ってしまい、さらに発音まで聞きづらかったりしたのでは、人生そのものを暗くしてしまいかねません。  こういった悩みにこたえることができるよう歯科治療の技術は日進月歩しているのです。矯正歯科治療やインプラント(人工歯根)治療は言うに及ばず、最近ではホワイトニング(漂白)と称されるテクニックも広く行われるようになってきました。  美しい歯と魅力的な歯並び、そして明りょうではっきりした発音・話し方で希望に満ちた明るい人生を送りたいものです。 (県歯科医師会)


第45話「痛みと炎症 薬だけでは治らない」  上へ


 「歯が痛むのですけれど、今忙しいので薬だけください」。こういう患者さんがよく来院します。しかし、症状が分からなければ薬の出しようもありませんし、処置をしないと薬の効果はほとんどありません。
 また、以前とても歯の痛い時があったのですが、忙しいので我慢していたら、いつの間にか痛みがなくなってしまいました。今度また痛くなったら治療してもらおうと思っています。こういう患者さんもよくいます。
 しかし、歯の痛みは急性の激しい痛みがいったんおさまってから、慢性へと移行します。決して治ったのではなく、どんどん病気が進行しているのです。
 日常、患者さんが歯の痛みとして訴える原因は次の三つに分けられます。
 @歯髄(歯の神経)の炎症による痛み
 A歯根の先端付近の炎症による痛み
 B歯肉に関連した炎症による痛み
 @の歯髄の炎症は、虫歯が歯髄に近い所まで進行した場合に起こり、大きな痛みがありますが治療すればすぐに痛みがとれます。治療しないで痛みに耐えていると、歯髄が死んで痛みがなくなることもあります。しかし、このまま放置すると、根の先の骨が溶かされ、そこにうみがたまりAの状態に移行していきます。
 Aの場合、炎症が慢性的に進行しているうちはあまり自覚症状はありませんが、体調や歯の状況の変化が加わると、激しい痛みとはれが出てきます。治療回数が増え、抜歯となることもあり、時には生命にかかわることもあります。
 Bの歯肉の炎症による痛みも、ほとんどはれを伴います。我慢して治療を受けないでいても痛みが消え、治ったように思える場合もありますが、これも慢性的に進行している状態になっただけなのです。必ずまた急性化し、大きな痛みとはれが襲ってきます。この場合も放置すると、抜歯となることもあります。
 このほかにも痛みの出る原因はいろいろありますが、早期治療が重要であることは間違いありません。薬だけで我慢していたり、放置しておくと必ず次の痛みと、慢性化して敢り返しのつかない状態になります。歯の病気は自然に治ることはないのです。

(県歯科医師会)

第46話「入れ歯 忍者は変装に使った?」  上へ


 1927(昭和2)年に、東京下谷の広徳寺にあった柳生家の墓地が、区画整理のため移転することになり改葬のため発掘されました。そのとき柳生飛騨守宗冬(ひだのかみむねふゆ)の墓から上下一組の総入れ歯が発見されました。宗冬は一万二千五百石の大名で、五代将軍の綱吉の剣術指南役でした。入れ歯はツゲの木を彫刻して作られていて、歯の部分はろう石を使い、三味線糸で固定した精巧なものであり、現在の入れ歯と比べても十分に機能を果たすことができるものでした。
 宗冬は六十五歳まで生きていましたが、この人れ歯は六十歳前後に作ったものと考えられ、しかも自分の歯はかなり晩年になってから抜いたものと推測されました。
 この事実から戦後の作家、五味康祐氏は「柳生武芸帳」の中で柳生又十郎(後の宗冬)が「くの一の術(女性に化ける術)」を使えるようにするため歯を抜いたり、入れ歯を作ったりする場面が出てきます。入れ歯は二種類あり、一つは墓から出たものと同様のもの、もう一つはおはぐろで染めたような黒い歯の入れ歯を作ったと書いてあります。
 おはぐろとは、江戸時代は結婚した女性が歯を黒く染めたことです。公家の人々は男性も染めていました。すなわち、この人れ歯を使うと女性や公家に変装することができます。
 以上は、フィクションですが、柳生家といえば忍者の里、伊賀、甲賀に近く、柳生新陰流は、大名の多くが御家芸としていることを思うとスパイ活動をしていたのでは、という考えも出てきます。宗冬は大名ですが、同時に新陰流の総帥です。殿様が自ら忍者のようなことをしたとは思えませんが、下位の忍者たちは入れ歯を使って変装したかもしれません。
 ちなみに、現在の総入れ歯は世界で日本がもっとも古く、十六世紀半ばにはかめるものが実用化していました。ツゲなど木を彫刻して作ったものです。初めのころは、仏像など細かい彫刻を仕事としている仏師といわれる人々が作っていました。江戸時代になりますと、口中医とか入れ歯師という専門家が出現しました。「南総里見八犬伝」を書いた滝沢馬琴は歯が悪く、入れ歯を作っています。その代金は一両三分で現在の七、八万円でした。当時としてはかなりの大金です。現在の日本では、入れ歯は保険が利きますので、かなり安く作ることができます。
 忍者が変装に入れ歯を作っていたということは、すばらしいアイデアです。もしかすれば本当だったかもしれないと思いたくなります。
(県歯科医師会)

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