青森県の歯とお口の健康、歯科について 一般社団法人「青森県歯科医師会」のウェブサイト

歯周病periodontal disease

歯周病とは

歯周病とはお口の中の歯周病菌による感染症で、歯ぐきに炎症が起きる病気です。進行すると歯を支える骨にまで影響が及び、放置すると歯が抜け落ちてしまうこともある恐ろしい病気です。
「口臭を指摘されたことがある」
「朝起きると口の中がネバネバする」
「歯みがきした後に毛先に血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある」
「歯ぐきが赤く腫れてきた」
「歯ぐきが下がり、歯が長くなったような気がする」
「歯ぐきを押すと血や膿が出る」「歯と歯の間に物が詰まりやすい」
「歯が浮いたような気がする」
「歯並びが変わった気がする」
「歯が揺れている気がする」
・・・あなたには日頃、このような症状はありませんか?実はこれらはすべて歯周病の典型的な症状です。もしもこのような症状がひとつでも該当すれば、歯周病が疑われます。また歯周病は自覚症状のないまま進行する病気で、気がついた時にはかなり進行している場合も多いので、できるだけお早めに歯科医院へ受診されることをおすすめします。

(鴨井久一先生・沼部幸博先生共著「新・命をねらう歯周病(砂書房)」より引用)

歯周病の原因と進行

歯周病は歯と歯ぐきの境目の歯肉溝にプラーク(歯垢)と呼ばれる、細菌とその代謝産物の塊がたまることによって起こります。
歯ぐきが赤く腫れたり出血したりする「歯肉炎」からはじまり、歯と歯ぐきの付着部が破壊される歯周ポケットの形成、さらに歯を支えている骨も壊されていく「歯周炎」に移行すれば、だんだん歯がグラグラして最後には支えがなくなり歯を失うことになります。
歯ブラシなどの清掃器具は歯周ポケットの上部にしか届かないため、歯磨きには限界があるのです。歯周病改善のためには歯科医院での治療が必要不可欠です。

プラーク(歯垢)は細菌とその代謝産物の塊です

歯石とはプラーク(歯垢)が
石灰化して硬くなったものです

歯肉炎と歯周炎

歯周病とは病気が歯ぐきだけに限局している「歯肉炎」と、その歯肉炎が進行して歯を支えている歯の周りの組織が破壊されていく「歯周炎」に分けられます。

歯肉炎

歯と歯ぐきの境目にある歯肉溝と呼ばれている溝にプラークがたまることにより、歯ぐきが炎症で腫れてきます。歯みがきをしたときに出血がみられることもありますが、ほとんどの場合自覚症状はありません。口腔内を清潔にすること(プラークコントロール)ができれば、ほとんどの歯肉炎は治ります。

初期の歯周炎

歯ぐきの腫れが大きくなり、歯肉溝がポケット状に深くなる歯周ポケットが形成されます。歯周病菌が歯の周りの組織に侵入して、歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊が始まります。急性炎症の場合を除いて、ほとんど自覚症状はありません。

中期の歯周炎

歯槽骨が更に破壊され、歯が少しぐらつくようになります。出血が見られるだけでなく、膿も出るため、口臭もひどくなります。

重症の歯周炎

歯槽骨が歯の根の長さの半分以上破壊され、歯のぐらつきがひどくなるため噛みづらくなってきます。歯槽骨の破壊がさらに進むと歯を支えていることが出来なくなり、最終的には歯を失うことになってしまいます。

歯周病のその他の原因

歯周病の直接的な原因はプラーク(歯垢)ですが、その他に「口腔内の環境」や「生活習慣」にも間接的な原因となって歯周病を進行させるリスクファクター(危険因子)が数多く潜んでいます。歯周病は歯周病菌だけが原因となるのではなく喫煙や不適切な歯磨き習慣、不規則な食習慣などの生活習慣、糖尿病や性ホルモンの不調和、老化や遺伝などの「宿主の因子」、ストレス、薬の長期服用などといった「環境の因子」が複雑に絡み合う多因子性疾患です。歯肉病の予防には、ご自身での適切な歯磨きでプラークを取り除くことと、これらのリスクファクターを少なくしていくことが大切です。

(図提供:日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座 沼部幸博 教授)

歯周病と全身疾患

歯周病は、100以上の全身疾患と関わっています。お口の中の血管は毛細血管を通じて全身の臓器と繋がっていて、歯周病の病変部から侵入した歯周病菌や歯周病菌から出された毒素、また炎症をコントロールするために産生された炎症性サイトカインなどの炎症物質が血液を介して全身に循環して、たどり着いた臓器で様々な悪影響を及ぼします。また歯周病菌が気管支や肺に入り込んで誤嚥性肺炎になることもあります。最近の研究では、唾液とともに飲み込まれた歯周病菌が腸管にまで達して腸内細菌叢の悪玉菌が増えることにより、糖尿病・動脈硬化・がん・リウマチ・肥満等の多くの疾患が引き起こされることも分かってきました。

歯周病の予防・治療はチームワークから

歯周病の予防・治療の主役はあなた自身です。なぜなら歯周病は、糖尿病や高血圧と同じように日常的な健康管理が必要な病気だからです。歯周病の予防・治療は、口腔内を清潔にすること(プラークコントロール)が基本です。あなた自身がご自宅で行う歯磨き(セルフケア)と、歯科医師・歯科衛生士による歯石の除去や歯面清掃(プロフェッショナルケア)が必要不可欠です。定期的なメンテナンスを継続して行うこと、つまり、あなたとかかりつけ歯科医院の二人三脚で健康な歯と口を守っていくことが歯周病の予防・治療ひいては全身への健康や全身疾患の予防・改善に繋がっていくのです。

(鴨井久一先生・沼部幸博先生共著「新・命をねらう歯周病(砂書房)」より引用)

プラークコントロールと歯石の除去・歯面清掃

プラークコントロール
歯周病の原因であるプラーク(歯垢)をできる限り少ない状態を保つこと、つまり「プラークコントロール」が歯周病の予防・治療の基本となります。そのためにはまず、「自分自身でお口の中を管理する」というしっかりとした心構えが大切です。次に歯磨きの方法は歯並びや歯ぐきの状態などにより、人それぞれ異なります。適切な歯磨きの方法を覚えていただくためにも歯科医院に相談して、ご自分に合った歯ブラシと歯の磨き方を教えてもらいましょう。そして毎日しっかり歯を磨いて、歯周病菌が増えないように気をつけましょう。歯周病の予防・治療は歯科医師や歯科衛生士だけでなく、あなた自身の努力も必要になります。また定期的にかかりつけ歯科医院を受診して、磨き残っているプラークや歯石をとってもらうことも重要です。

(鴨井久一先生・沼部幸博先生共著「新・命をねらう歯周病(砂書房)」より引用)

歯ブラシ

最も効率よくプラークを取り除くには毛部は3×7列ほどのものがおすすめです。植毛部の長さは前歯2本分ほどが丁度良いでしょう。毛の硬さは硬めの方がプラーク除去には向いていますが、すでに歯周病があり歯ぐきが傷んでいる場合には、はじめは軟らかい毛の歯ブラシを使い、歯周病が改善したら普通の硬さのものを使用すると良いでしょう。持ち方は、エンピツを持つようなペングリップがおすすめです。

歯磨き剤

歯周病の予防・治療だけを考えた場合、歯磨き剤は必ずしも必需品ではありませんが、むし歯の予防や歯を白く保つためには歯磨き剤を適度に使った方が良いでしょう。よく磨けていないのに磨けたと錯覚してしまうこともありますから、使い過ぎには注意しましょう。

デンタルフロス

歯ブラシの毛先が入らない歯と歯の間を磨くのに適しています。歯と歯の間を糸で歯ぐきを傷つけないように差し込み、ゆっくりと歯の面に合わせて上下に動かします。その際、歯ぐき側に動かす時は細心の注意を払いながら、歯ぐきに当て過ぎないようにして、次に歯の噛む側に向けて動かします。

歯間ブラシ

歯ブラシの毛が入りにくく、磨き残しが出やすい、歯と歯の間にできたすき間を磨くのに適しています。歯周病や加齢のために歯ぐきが下がっている人には特に効果的です。サイズが小さすぎるとプラークを取り除く効果が不十分になり、逆にサイズが大きいと歯ぐきを傷つけてしまいます。すき間の大きさに合ったものを歯科医院で選んでもらい、正しい使い方を教えてもらいましょう。

いつ歯を磨くか

毎食後に磨くことが理想ですが、それが出来なければ1日2回特に就寝前にしっかり磨くことです。就寝前に磨くのは、睡眠中は唾液の分泌が減少してお口の中が乾いてむし歯や歯周病が進行しやすい状態になるためで、それを防ぐには寝る前に十分にプラークを取り除く必要があるからです。

何分磨くか

しっかり磨くには、少なくても10分程度かかります。

スケーリング・ルートプレーニング
歯石とはプラーク(歯垢)が固まって石灰化したものです。また歯石の上にもプラークがたまるので、きれいに取り除く必要があります。歯に沈着した歯石や歯周ポケット内のプラークや歯石を、専用の器具を使って機械的に除去することを「スケーリング」と呼びます。取り除く際には手用または超音波を利用したスケーラーなどを用います。また歯石の付いていた歯の表面には、お口の中の細菌からの毒素がしみ込んでいたりザラザラしていたりするので、それを除去してきれいな歯の表面を作ることをルートプレーニングと呼びます。定期的に歯科医院でのスケーリングを行い、プラーク(歯垢)や歯石をとってもらうことが重要です。

定期的にかかりつけ歯科医院を受診しましょう
プラークコントロールの主役は患者さん自身ですが、どんなにしっかり歯磨きを行っても磨き残しによって歯石ができてしまいます。定期的にかかりつけ歯科医院を受診して、プラーク(歯垢)や歯石をとってもらいましょう。また、正しい歯磨きができているかもチェックしてもらいましょう。歯周病菌は口腔常在菌であり、ゼロにすることはできません。歯周病は決して「完治」する事はなく、歯周病の治療には終わりはないのです。人が生きている限りプラークは繰り返し形成され、ちょっと油断すると歯周病菌が増えて歯周病は再 発してしまいます。自覚症状がなくても、定期的に受診されることをおすすめします。

(図提供:日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座 沼部幸博 教授)

お口の中の病気Illness in mouth