青森県歯科医師会

  

【平成22年度青森県学校歯科保健研究大会】

 去る平成22年7月29日(木)に県歯会館にて、 『平成22年度青森県学校歯科保健研究大会』が開催 されました。県学歯との合併後、学校歯科委員会とし て初めての運営でしたが、担当理事の高瀬先生のリー ダーシップのもと、県教育委員会や委員会の先生方の 協力により、例年にない190名もの多くの参加者で 無事終了することができました。

 今回は来賓として三村申吾青森県知 事がお見えになり、祝辞を述べられま した。知事は事務局が用意した原稿を 見ることなく、「歯が悪くて8020 は無理だが8017を目指して今一日 3回歯磨きをしている」こと、「何で も頑張りすぎるので歯間ブラシをしす ぎて隙間が大きくなったので今はウオ ーターピックを使っている」など自分 の体験を通して歯科の大切さを述べら れ、2分の予定が5分以上も超過し、高瀬先生の困惑した様子がうかがえました。

 講演はまず日本赤十字北海道看護大学の伊藤善也教授が『児童・生徒の肥満は伝染病・風土病・現代病である』という演題で話されました。「現代病」とは、肥満児は昭和43年頃より出始め、最初は都会に多く田舎では少ないという傾向で出始め、70年代は4%、80年代は8%と次第に増加し2000年頃をピークに維持かやや減少傾向で、現在は10%ぐらいで推移しているとのことでした。体格の分布を見ると肥満者の増加だけでなく痩身者も増加し、特に20・30歳代に体重の減少傾向が見られ、今後は痩せの増加にも注意が必要だろうと述べておられました。「風土病」とは、肥満は地域性があり現在は北国で農村・漁村に肥満児が多いそうです。我が青森県は肥満傾向児率が13・3%で全国1位だそうで、その後を北海道、岩手が追っている状態で都会は少ないとのことです。「伝染病」とは、太っている両親の子供は太る、太っている者同士で群れるようになる傾向があるとのことでした。肥満と生活習慣との関係では、肥満傾向の子供ほどテレビ視聴時間が長くなること、20時以降に就寝する子供の割合が平成19年には4才児以下でもほぼ100%、小学生の1日の歩数がどんどん減少してきているなど、子供の運動不足が顕著になっているそうです。また1日の摂取エネルギー量は変わっていないが脂肪摂取比率が大きくなってきており、それで肥満になりやすい(高脂肪食は食欲を満足させにくいので食べ過ぎてしまうらしい)そうです。
 また、肥満ばかりでなく、低出生体重 児が増えてきているそうです。低出生体 重児は糖尿病になりやすかったり、虚血 性心疾患で死亡する確率やメタボリック 症候群を発症する確率が高いそうです。 これは胎児期の栄養および内分泌状態は 胎児の組織や機能に影響を与え、かつそ れらは生涯にわたり持続することがあり、 最終的には諸種の代謝疾患の発症基盤を 形成する(Barker仮説)ためだそ うで、そのため低出生体重児は生涯にわたり食生活に注意が必要です。
肥満を改善・予防するために、
(1) 運動習慣を身につけよう。可能なら運動系部活に参加しよう。運動系部活に参加していない場合は休日に60分以上運動しよう。
(2) テレビやテレビゲームから離れよう。平日は1日合計50分以内、休日は1日合計100分以内。
(3) よい食習慣を身につけよう。朝食をとろう、食物繊維を積極的に摂取しよう。
と提言されていました。

 次いで明海大学学長の安井先生が「学校歯科保健活動のねらいと食を考える」という演題で講演されました。
 食は生きるうえでの基本であり、食を楽しむことが人生を楽しむことに通じると話され、「生きる力をはぐくむ」ためには、子供達がいろいろな経験を通じて、食に対する知識と食を選択する力を習得し健全な食生活を実践できることが大切である。また「食べる」機能は自然と獲得できるものではなく学習過程を経て得られる機能であり、発達段階を通じて家庭や地域との連携の中で学校保健活動が大切であると述べておられました。
 「食べる」機能は、授乳・離乳支援に 続き、3歳までの学習により差が出てき ます。さらに、小学生期から中学生期に わたって生涯の食に対する基本的な知識 や機能の発達を得ることになります。食 に関する教育においては、①食べる機能 ・食べ方の支援②口腔の健全保持のため の食教育③味覚の教育・五感教育、の3 項目があり、それぞれの時期にあわせて の指導法について話をされ、肥満児につ いてもただ運動をしろといってもなかなか実践できないが、噛む回数を30回に増やす(カミング)などの具体的な小さな目標30を与えることでBM指数を改善した事例などを紹介されていました。

 そのあとシンポジウム「児童・生徒の生活習慣病を口腔衛生の立場から考える」として、まず弘前市立第三大成小学校養護教諭の毛内礼美子先生が実践発表「生活習慣と歯の健康」を行いました。内容は、平成19年に青森県健康教育実践研究校の指定を受けたのをきっかけに、学校保健委員会を「さわやか健康会議」とし、平成19年度は早寝早起き朝ごはん運動に取り組み、夜10時までには寝るという目標を立てたが半数以上の子供が達成できないでいた。その原因はテレビやテレビゲームであることが調査結果からわかり、10時からのテレビを見たい人はビデオに撮ってもらい翌日見るようにすること、テレビの弊害の講演を行い児童・保護者に注意を促した。平成20年度は、子供たちが改善したいと願っている実態について、どのような解決方法があるのかを一緒に考えながら、子供たち自身が選び取っていくことができる力をつけさせたいと考え「自分の歯を守るためにできることを考えよう」をテーマに取り組みを行い、むし歯調査、保健委員による寸劇「むし歯0作戦」、学校歯科医による歯磨き指導を行った。平成21年度は、保健委員による年3回の赤ぞめ教室、歯ブラシ点検などを行い、22年度は、「めざせ!つるりん歯」を合い言葉に、磨いた後のつるつる感を舌でさわって自分でチェックすることや、保健委員による寸劇、歯磨きカードを活用していることが報告された。地域社会、家庭、学校、学校歯科医などがうまく連携をとりながら、一歩一歩着実に成果を上げている報告に学ぶべき点がたくさんありました。
 シンポジウムでは時間がなく、あまりディスカッションできませんでしたが、肥満や食育などの種々の問題に対し、学校医、学校歯科医、学校などの垣根を取り払い、協力して学校保健の課題を解決していくことが大切でありそのための一手段として学校保健委員会の活用が有効ではないかという意見が出ておりました。
 今回の学校歯科保健研究大会は、内容も盛り沢山で密度の濃い充実した大会でした。平日の午後という日程の関係から歯科医師の参加はあまり多くはありませんでしたが、学校歯科活動に興味のある先生には是非一度参加していただきたいと思います。

学校歯科委員 黒田雅仁記

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